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第十四番 弘明寺 ~慈愛~

次の日。四月八日。花祭。この日、お釈迦様の誕生祝が多くの寺で執り行われる。この日にどの寺を回るか。順番通りに一番から三十三番まで回らなくても良いことであるし、さて。考えた挙句、いやそれほど考えもせずほぼ直感で二寺を巡ることとした。この日の二寺を選んだのは、賑やかさの中に身を置いてみたかったからかもしれない。

まずは弘明寺。横浜市営地下鉄弘明寺駅から、商店街となっている表参道を歩いて行く。山中などの自然の中にある寺も厳かで良いが、街中にある寺も庶民の信仰を集めてきたことが見て取られ、感慨深いものがある。

運慶作の見事な仁王が安置される仁王門を潜り、石段を上りつめると観音堂。堂内の本尊十一面観音立像は、行基が一刀三礼で刻んだといわれる有名ななた彫りの観音像である。高さ約1.8mの像はケヤキの一木造りで、平安時代の作らしい。

彫り跡をそのまま残した素朴な像を眺めていると、赤ん坊を抱いた母親が観音像に近づき、お祈りを始めた。母親の真摯な姿を見た観音さまの微笑みが少し増したような気がした。するとそこにひとりの老婆が突然現れ、赤ん坊を見ると「あー観音さまー。どうかこの子にお恵みをお与えくださいー!こんなかわいらしい子がいますか、まぁほんとにねぇー。観音さま、よろしくお願いします~~~!」と声を上げた。母親と特に関係のない老婆の突然の登場にこちらはびっくりしたが、ほほえましく思い、やさしい気持ちになった。母親は少し照れくさそうにしながらも、うれしそうに微笑んでいた。赤ちゃんも笑っていた。観音さまも微笑んでいた。みんな笑っていた。

観音堂を出ると甘茶が振舞われていた。お釈迦様の誕生祝のおすそ分けを頂く。ほっと一息。幸せな昼下がりである。

ところで当寺には、珍しい竹の一管造りで、聖母マリアのような優しい表情と言われる「竹観音」がいるのだが、拝むのをすっかり忘れて寺を後にしてしまった。出逢いの縁というものはこういうものかもしれない。今まで、出逢える筈の人とほんのわずかなことで出会えず、すれ違ったりしたのだろうな、と思った。一息つき、また新たな出会いを求めて巡礼は続く…。


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