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第二十五番 大御堂 -是認-

辛かった。情けなかった。なんでいつもこうなんだろう…。
前の寺から筑波山へ向かって歩く道々、自分を責めていた。このペースでは次の寺の閉門時間に間に合わない。今日を逃すとまた何時来られるか分からないというのに。

もう少し早く行動していれば前のバスに間に合ったのに。あそこで道草を喰っていなければもっとスムーズに行動できたのに。今までの人生で、自分の鈍さと無計画な行動の為にどれだけの後悔を重ねてきたというのか。時間に間に合わなかったことでどれだけ人様に迷惑をかけてきたというのか。そう思う度にまた自分を責めた。

巡礼って、もっと心静かに、穏やかな気持ちで歩いて行けるものだと思っていたのに。
今までの自分を忘れて、新しい人生を歩いて行けると思っていたのに。
焦りながら歩きつつ、自分の至らなさを心の底から実感していた。

しかし。今までの人生がそんなに簡単にリセットされる訳はないんだ。
至らない、情けない今の自分を認めて歩いて行くしかないんだ。
そう思うと、少しだけ体が軽くなったような気がした。

閉門には間に合わないかもしれない。でも、とにかく今日出来るだけのことはしよう。
本数の少ないバスを乗り継ぐと霊峰筑波の山麓に着き、ここからは軽く登山の趣。筑波の山は傾斜が急であり、急いで登ると可也息が切れる。しかし、道に迷いながらも登り続けるとようやく山門に辿り着いた。境内に着くと既に納経の受付時間を少し過ぎていた。半ば諦めながら灯りの消えた朱印所の扉に手を掛けると、すっと開いた。

「すみません…。」と声を掛ける。しかし応答がない。「あの、すみません。」と少し大きな声で呼んでみると奥から返事があり、女性の方が出て来られた。時間を過ぎてしまった事を謝ろうと思っていたのだが、出て来られた方が以前付き合っていた人にそっくりだったので、驚いて声を失ってしまった。自分の中に封じ込めていた思い出が蘇って取り乱しそうになったが、やっとのことでご朱印をお願いすると「はい、おつかれさまです。」と優しく応えて下さった。

様々な思いと疲労とで頭の中が混乱して何も言えずに居ると「大変だったでしょう。お体には気をつけて。明日のお仕事に障らないようにね。」と。優しい言葉につい涙が出そうになってしまった。そしてまた、「筑波の山は急でしょう。山を馬鹿にしたら駄目よ。自分一人の体ではないのだから大事にしないと。」と。一言一言が心に染み入る。

もっと色々お話を聞いて示唆を得たかったのが、近所の方の祈祷の支度がある様子だったので、お暇することにした。何だか夢のような時間であった。静かに人々を見守る厳かな大御堂に拝礼する。当寺には祈願石と呼ばれる石があり、手を触れて願いを込めると苦しみを封じ込めるといういわれがある。封じ込めてしまいたいことは山ほどあるが、認めて乗り越えて行かなくてはならないこともまた多い。祈願石には触れず、筑波の山を後にすることとした。しかし、自分は何を認めて歩いて行けば良いのだろうか…。

今日の道行きはどうだったのだろう。こころの巡礼道の過程はどうだったのだろう。いつかまた、あらためて考えたい。気楽な一人旅とはいっても、この身は自分一人のものではない。この巡礼の旅を、そして人生という長旅を支えて下さる全ての方に心から感謝したい。

25oomidou筑波山大御堂(おおみどう)。

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